お客様の声
カコムス株式会社 フロンティアカンパニーを実現する
段階的な AI 活用と再現性の高いロードマップ
段階的な AI 活用と再現性の高いロードマップ
サマリー
AI 活用に関する課題と実践内容
多くの企業が AI 活用を検討する中で、最大の課題となるのは技術そのものではなく、全社的に活用を推進するための組織体制にあります。カコムス株式会社では、この課題に対し、トップ主導で AI 推進体制を構築し、段階的な活用を進めてきました。その起点として、社内規程やマニュアルといった既存ドキュメントを Microsoft SharePoint に集約し、 Copilot Studio により チャットを介してデータを取り出せるエージェント開発を実現。汎用性の高いテーマから着手することで、着実な全社展開の基盤を築いています。
マイクロソフト製品を選択した理由
ノーコードで開発できる Copilot Studio によるエージェントは、既存システムを一切改修せずともデータを AI につなげられるため、企業ごとにデータ構造が異なっていたとしてもプロンプト調整のみで柔軟に対応できることから、他社への横展開も容易な構造です。また、 Copilot Studio は容易に最新モデルへ更新可能なため、最先端の技術を即座に業務へ組み込める将来性も導入の決め手となりました。
取り組み状況と今後の展望
カコムスでは、 Copilot Chat の個人利用から全社利用、特定業務の効率化へと段階的に AI 活用を進めており、これはマイクロソフトが提唱する「フロンティアカンパニー」の概念に合致します。今後は ArgoSphere の機能を拡張し、経営判断に直結する意思決定支援エージェントとして開発を推進。将来的には Microsoft 365 や Microsoft Fabric を活用する企業向けに PoC 型で展開予定です。
事例本文
カコムス株式会社(以下、カコムス)は、 2021 年に設立 50 周年を迎えた IT 企業です。「私たちカコムスは、 高品質かつ最善、最適な IT ソリューションサービスの提供をもって お客様の繁栄に貢献します」を企業理念に掲げ、システムコンサルテーションや受託開発を中心に事業を展開。近年は AI 導入支援や Azure を活用した次世代 AI 基盤の整備にも力を入れています。
幅広い IT ソリューションを手がける中でも特に、Microsoft ソリューション分野において豊富な知見と実績を有している点が同社の強みで、Microsoft 365・Azure・Power Platform の構築から運用、社内定着を促す教育・トレーニングまでを一気通貫で支援しています。Copilot の導入支援に加え、導入済み企業に対する活用支援やエージェントを活用した業務効率化の推進など、より実践的な支援まで手掛けており、多くの顧客から高い評価を獲得しています。
カコムスにおける AI 活用は、グループ代表による「 AI を全社で推進する」という明確な方針のもと、段階的かつ実務に密着したかたちで進化してきました。特定の業務にいきなり導入するのではなく、社員一人ひとりが AI の活用に慣れるところから開始し、身近な業務課題の解決を起点に展開。こうした取り組みを積み重ねることで、活用範囲を着実に広げてきました。
また、本事例は、 Microsoft 365 Copilot 、 Copilot Studio 、 Microsoft SharePoint 、 Microsoft Fabric といった標準的なエコシステムのみで構成されており、小さく始めて段階的に拡張することで、全社へ展開可能な AI 活用モデルを実現しています。大規模なシステム改修や特別な開発リソースを必要としないため、他社でも再現可能な点も特徴です。
同社が具体的にどのようなプロセスを積み重ねてAIを組織へ自然に浸透させ、意思決定を支援する仕組みへと進化させたのか、ステップを追って紹介します。
カコムス株式会社
カコムスの AI 活用の歩みと「フロンティアカンパニー」「カスタマーゼロ」の体現
カコムスにおける AI 活用の取り組みは、マイクロソフトが提唱する 2 つの次世代型組織、「フロンティアカンパニー」と「カスタマーゼロ」の姿と重なります。前者は AI と人間が役割分担しながら協働するハイブリッドチームを前提に、 AI エージェントを経営や業務戦略へ組み込む組織であり、後者は自社を最初の顧客として AI 活用や製品開発を先行的に検証・改善する考え方です。カコムスはこれらを全社で実践してきました。
これらを実践するうえで最初に着目したのが、社員が日常的に参照する社内規程・マニュアル・ルール類の整理です。情報は存在するものの検索に手間がかかるという課題に対し、既存ドキュメントを Microsoft SharePoint に集約し、 AI から活用可能な環境を整備しました。
Microsoft SharePoint は高いセキュリティのもとでドキュメントを安全に一元管理できる基盤であり、安心して AI と連携できるデータソースとして機能します。これにより、組織全体で信頼性の高い情報を活用可能な環境を整えました。
このテーマは業種や企業規模を問わず共通しており、 AI 活用の初期成果を得やすい領域です。こうした取り組みを起点に、同社は 4 つのステップを踏みながら、段階的に AI 活用を高度化していきました。
STEP 0 :社員一人ひとりが AI の使用に慣れるため、日常的に Copilot Chat を使用
社内で AI 活用を検討する中では、「組織としてどう動き出すか」 という課題に直面しやすく、個人単位での AI 活用は生まれても、全社・部門横断で定着しづらい状態になりがちです。
そこでカコムスでは、この課題に対してグループ代表が正面から向き合い、トップ主導で AI 推進プロジェクトを立ち上げる意思決定を行いました。これを起点に、全社的な取り組みが本格的に始まりました。
そのうえで、いきなり高度なシステム開発や業務変革に踏み込むのではなく、 STEP 0 として位置づけたのが、個人レベルでの Copilot Chat の活用です。各社員が日々の業務の中で AI に触れる機会を増やし、「まず使ってみる」という体験を積み重ねることで、 AI に対する心理的ハードルを下げることを重視しました。
Copilot Chat は、 Microsoft 365 Copilot のライセンスのもと、高いセキュリティ環境で利用できる点も大きな特長です。業務利用における情報管理の観点でも安心して活用できることから、社内への展開がスムーズに進みました。こうした日常的な利用を通じて、社員一人ひとりが AI を自然に業務へ取り入れる土台が構築されていきました。
Copilot Chat の個人利用について、営業本部 ソリューション営業部 部長の中元 順一 氏は、次のように振り返ります。
「全社で利用を進めたことで、社員それぞれの AI に対する心理的ハードルが着実に下がり、その後のステップにおける新たな取り組みにもストレスなく移行できたといえます。この基盤が、次の全社活用段階への円滑な展開につながっていきました」(中元氏)
カコムス株式会社 営業本部 ソリューション営業部 部長 中元 順一氏
STEP 1 :問い合わせ数削減のため社内規定・ルールを参照できる「 KMSG-AI 」を開発、社内問い合わせ数を 6 割削減
カコムスでは、 STEP 0 で社員一人ひとりが AI に慣れる土台を整えたうえで、業務課題の解決に直結する次のステップとして「問い合わせ対応」に着目しました。従来は、業務中に不明点があった場合、近くの同僚や人事・総務部門へ都度確認するケースが多く、対応する側・される側双方の業務効率に影響が出る場面がありました。
こうした課題を解決するため、同社は社内規程や就業ルールを学習させた AI チャットボット「 KMSG-AI 」を開発し、全社に展開しました。 KMSG-AI は、 Microsoft SharePoint に集約された各種ドキュメントをもとに、 Copilot Studio でエージェント化された仕組みです。社員からの「どの規程を参照すべきか」「どのような手続きが必要か」といった問い合わせに対し、 AI が即座に回答します。
Copilot Studio はノーコードでのエージェント開発が可能であり、特別な開発スキルや専門知識がなくても構築・運用できる点が特長です。また、既存のドキュメントを Microsoft SharePoint に集約するだけで AI 活用が可能になるため、導入ハードルも低く、迅速な展開につながりました。チャットを通じて必要な情報を容易に抽出できることで、 AI は日常業務に自然に組み込まれていきました。
導入後、 KMSG-AI の利用は月 100 回を超え、社員の行動にも変化が生まれました。当時の様子や効果について、中元氏は次のように振り返ります。
「 KMSG-AI を導入してからは、まず AI に聞く習慣が定着し、社員一人ひとりが自己解決できるようになりました。その結果、人事・総務への問い合わせは導入前と比べて約 6 割削減され、対応工数も 4 割程度に圧縮できています。また、こうした基盤が全社で整ったことで、現場主導でも AI エージェントを開発・活用できる段階へと進み、 次のステップにつながるより専門的な業務課題の解決に取り組めるようになりました」(中元氏)
STEP 2 :正確かつ素早いエンジニアの配置を目指し生まれた「経歴書エージェント」における「カスタマーゼロ」の取り組み
KMSG-AI の全社展開によって、社員が日常業務の中で AI に触れる機会が増えたことで、次の段階として現場主導で AI エージェントを開発・活用するフェーズへと進みました。この取り組みとして生まれたのが、膨大な経歴書の中から案件に最適なエンジニアを抽出する「経歴書エージェント」です。
従来では、カコムスグループの SES 事業において、案件に対するエンジニアのアサインは、担当者の記憶や経験に依存する部分が大きく、迅速かつ正確なマッチングが難しいケースがありました。そこで、すでに整備されていた社員の経歴書( Excel ・ Word ・ PDF )を Microsoft SharePoint に集約し、それらをデータソースとして Copilot Studio でエージェントを構築しました。これにより、蓄積された膨大なファイル群から必要な情報を抽出できるようになりました。
例えば、「 Python ができる人」といったスキル要件をチャット形式で入力するだけで、該当する人材の候補が即座に提示され、その人材のスキルレベルも含めて把握できます。この仕組みは、 STEP 1 の KMSG-AI と同様に「 Microsoft SharePoint 上にデータがあれば、 Copilot 上で活用できる」という特長を活かしたものです。
これにより、 AI は単なる業務効率化ツールにとどまらず、人材活用や営業活動に直接貢献する存在へと進化しました。この取り組みのポイントについて、中元氏は以下のように説明します。
「本取り組みの大きな特徴は、社内の AI ガイドラインに則りながら、非エンジニアである営業担当者が自ら構築・業務実装を行った点にあります。業務課題を最も理解している現場担当者が、自身の発想でエージェントを形にし、実際の課題解決につなげたことで、『現場主導で Copilot Studio を活用する』という新たな文化が生まれました。この成果を受け、ほかの業務領域への横展開も視野に入れた取り組みが進められています」(中元氏)
一方で、現場主導で対応できる範囲には限界があることも明らかになりました。より高度なデータ設計やシステム連携を伴う案件については、非エンジニアのスキルでは対応が難しく、技術的な支援が必要となる課題も残されています。このような課題が、次のステップにおいて、より高度な AI 基盤の整備や専門的な開発体制の構築へとつながっていきます。
STEP 3: 膨大なデータを活用できる仕組みの構築を目指し、現在はタレントマネジメントシステム「 ArgoSphere 」へ発展
STEP 3 として現在カコムスが取り組んでいるのが、タレントマネジメントシステム「 ArgoSphere(アルゴスフィア) 」です。同社では数年前から、社員一人あたり約 500 項目に及ぶ iCD ( i コンピテンシディクショナリ)に基づくスキルデータを継続的に登録し、可視化を進めてきました。現在はこれらのデータを社内の Web アプリケーション上でデータベースとして一元管理しています。
しかし、データの蓄積が進む一方で、それらを横断的に分析・活用する仕組みは十分とは言えず、部署によっては人事考課の準備に数週間を要するなど、現場の負担が課題となっていました。
そこで ArgoSphere では、全社員のスキルデータを基盤に、 Microsoft Fabric を活用して経歴情報や組織情報を統合・分析し、 Microsoft Power BI によって組織横断のスキル状況を可視化する仕組みを構築しています。さらに Copilot のチャットを通じて、適材適所の配置検討や育成・研修のレコメンド、将来的には要員シミュレーションまでを支援する意思決定基盤へと発展させています。
ArgoSphere によるスキルの可視化や分析の効果について、経営戦略統括本部 研究開発室 室長の朝山 悟氏は次のように説明します。
「 Microsoft Power BI のレポートを通じて、似た業務に見える部門でも強みや成長しているスキルが大きく異なることが見えるようになりました。これまで部門ごとに断片的に見ていたデータが、会社全体としての強みや伸びしろとして把握できるようになった点に価値を感じています」(朝山氏)
現在は、こうしたスキルデータの蓄積と分析をもとに、要員計画や配置判断といった経営レベルの意思決定を支援する基盤として、社内で検証と改善を重ねている段階です。
このようにカコムスでは、 STEP 0 から STEP 3 まで段階的に AI 活用を進めることで、個人レベルの利用から、全社的な業務効率化、さらには経営判断を支えるシステム開発へと発展させてきました。これらの取り組みを一貫して支えてきたのが、代表自らによる「 AI を日常的に使う」という継続的なメッセージ発信です。
このような方針は ArgoSphere の開発にも反映され、「 AI を前提とした仕組みであること」「 UI は一つに統合し、スマートフォンから誰でもすぐに使えること」といった設計指針として具現化されています。
トップの明確な意思のもと、段階的に AI を業務へ組み込み、人と AI が役割分担しながら価値を創出し、自社で試行・検証を重ねてきたカコムスの取り組みは、まさに「フロンティアカンパニー」と「カスタマーゼロ」を実践的に体現した事例といえます。
カコムス株式会社 経営戦略統括本部 研究開発室 室長 朝山 悟氏
Copilot Studio を基盤にマイクロソフト製品を用いて開発を進めた理由は、圧倒的な汎用性と将来性の高さ
カコムスが Copilot Studio をはじめとしたマイクロソフト製品を用いて AI 活用を推進した背景には、圧倒的な汎用性と将来性の高さがあります。同社の AI 活用において重視したのは、既存システムを大きく改修することなく、段階的に AI 活用の範囲を広げられる柔軟な構造でした。この要件は、マイクロソフトのエコシステムを活用することで実現されています。
その代表的な例が、 STEP 3 における「 ArgoSphere 」の開発です。中核となったのは、 Microsoft Fabric のミラーリング機能でした。 Microsoft Fabric を活用することで、既存の自社開発の iCD システムや人事システム、社内 Web アプリケーションに手を加えることなく、裏側のデータのみを Microsoft Fabric 上へ同期し、 AI と連携する構成を構築しています。これにより、既存資産を活かしながら高度な分析基盤を実現しました。
この構成の大きな特長は、将来的な変化への強さにあります。投入するデータ構造が変更された場合でも、Copilot Studio 側のプロンプト(指示文)を調整することで分析を継続できるため、アプリケーション改修に依存しません。その結果、仕組み全体を他社へ横展開しやすく、サービス化の観点でも優れた柔軟性を持っています。
「データの形が多少変わっても、その内容を AI に伝えることで稼働できる。この柔軟性はサービスとして非常に重要です」(朝山氏)
また、 AI エージェントの開発に Copilot Studio を採用した理由は、ノーコードでエージェントを開発できる点に加え、 AI モデルを柔軟に選択・更新できることにもあります。 AI モデルは日々進化しており、その性能は分析結果や回答品質に直結します。 Copilot Studio では、新しいモデルが登場した際に、既存のエージェントを大きく作り直すことなく切り替えが可能であり、継続的に価値を高めながら運用できます。
「 Copilot Studio は、新しいモデルが出たタイミングで、自分たちでモデルを自由に切り替えられるのが非常に魅力です。開発当初に使っていたモデルでも十分実用的でしたが、モデルが進化するにつれて、回答内容の質が確実に良くなってきていると感じています」(朝山氏)
このように、マイクロソフト製品を基盤とした構成は、既存環境を活かしつつ拡張性と継続性を両立できる点において、カコムスの段階的な AI 活用を支える重要な要素となっています。
意思決定基盤への進化と今後の Copilot Studio への期待
ArgoSphere の開発を通じて、カコムスにおける AI 活用は、個人レベルの利用から着実に広がりを見せ、現在では自然言語でデータを横断的に分析できる意思決定支援基盤の構築へと発展しています。従来は部門ごとに分断されていた情報を統合し、誰もが直感的にデータへアクセスできる環境が整いつつあり、現在は業務適用に向けた検証を継続しています。今後はこの仕組みを発展させ、 Microsoft 365 や Microsoft Fabric を活用する企業に向けた PoC 型のサービスとして展開することも視野に入れています。
また、カコムスでは、 Copilot Studio を単なるアプリケーション開発基盤としてではなく、あらゆる業務の入口となるフロントエンドとして位置づけています。人材データにとどまらず、 Microsoft 365 や Microsoft Power Platform 、さらには Microsoft Azure や自社アプリケーションとも柔軟に連携することで、ユーザーが Copilot Studio を起点に必要な情報や判断材料へシームレスにアクセスできる環境の実現を目指しています。朝山氏は、 Copilot Studio への期待について、以下のように語ります。
「人材データに限らず、さまざまなシステムと連携することで、 Copilot Studio が業務のハブとなり、必要な情報に自然にたどり着ける状態になることを期待しています」(朝山氏)
カコムスの段階的な AI 活用は、どの企業でも取り入れられる再現性の高いロードマップ
カコムスでは、 AI 活用を推進するうえで「段階的に活用を進めること」を重視しています。まずは個人レベルでの利用からスタートし、全社展開へと広げ、さらに現場主導によるエージェント活用へと発展させ、最終的には意思決定支援へとつなげてきました。
具体的には、「個人利用( STEP 0 )→全社活用( STEP 1 )→現場主導のエージェント活用( STEP 2 )→意思決定支援( STEP 3 )」という段階を踏むことで、身近な業務課題を起点にAIを組織へ自然に浸透させています。これは Microsoft 365 Copilot や Copilot Studio 、 Microsoft SharePoint 、 Microsoft Fabric といったエコシステムを前提としており、同様の環境を持つ企業でも取り入れやすいアプローチです。
こうした STEP 0 から STEP 3 のプロセスは、AI を業務に定着させ、最終的に経営価値の創出へとつなげるロードマップであり、「フロンティアカンパニー」を実現する実践的なモデルといえます。
さらに同社では、経営企画部門が中心となり、グループ社員全員を対象としたアンケートを定期的に実施しています。日々の業務の中で生じる課題や不具合、小さな違和感までを収集・可視化し、次に取り組むべきテーマとして整理しています。こうした継続的な課題把握も、AI 活用を支える重要な基盤となっています。今後は、蓄積された業務課題の解決を起点に、さらなる高度化へと取り組んでいく方針です。
マイクロソフトでは、カコムス株式会社の段階的な AI 活用を推進するパートナーとして、これからも構想から実装、運用に至るまで一気通貫で支援していきます。
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