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2026/05/12

AI を組み込んだ業務プロセス変革を目指すキリングループ。ボトムアップの Microsoft 365 Copilot 導入施策を進め、Agentic AI も視野に

食品、医薬、ヘルスサイエンスを事業領域とするグローバル企業グループのキリングループでは、AI 活用を推進し、2035 年までに人がやらなくてよい仕事をすべて AI に移管することを目指す。その目標を実現するために、Microsoft 製品と高い親和性を有する Microsoft 365 Copilot のグループ各社への導入を進めている。

グループ各社から選出された人財によって構成される AI 推進委員会を設置して、導入方針を確認。各社足並みを揃えたうえで、キリンホールディングス株式会社とキリンビジネスシステム株式会社が中心となり、オンラインセミナーやエバンジェリスト育成などを通した Microsoft 365 Copilot の活用促進プロジェクトを推進。

導入開始から約半年で Microsoft 365 Copilot ユーザーは 6,000 名を超え、日常的に活用する機運が醸成されている。AI エージェントの活用も進み、業務をエージェントに移管する事例も見られるようになる。Copilot Studio の導入も予定されており、Agentic AI による業務プロセス変革を見据えた次フェーズの施策が展開している。

Kirin Holdings Company

Microsoft 365 Copilot を軸とした AI 活用により、業務変革を加速するキリングループ

キリングループは、祖業であるビール事業で磨いた「発酵・バイオテクノロジー」の技術力を基盤として、食品、医薬、ヘルスサイエンスを事業領域とするグローバル企業です。同グループでは「KIRIN Digital Vision 2035」を策定し、デジタルによる業務変革を加速させるためにさまざまな取り組みを進めています。

なかでも AI の活用は大きなテーマとして位置づけられており、AI 技術によって生産性の向上を図ることで、「2035 年までに人がやらなくてよい仕事をゼロにすること」が目標として掲げられています。グループ内の AI 戦略策定をリードするキリンホールディングス株式会社 デジタル ICT戦略部 主査の永沢 拓也 氏は、同グループの AI 活用方針についてこう語ります。

「任せられる仕事を AI に任せることで、従業員がお客さまや社会と共有できる価値の創造にチャレンジできる環境の実現を目指します。そのうえで、日々進化する AI のテクノロジーを商品開発や創薬といった領域に展開し、さらに AI を用いてお客さまのニーズの変化を的確に捉えることで、常によりよい商品やサービスを提供し続けられるサイクルを構築していきたいと考えています」(永沢氏)

同グループでは、2024 年から Microsoft 365 Copilot(以降 Copilot)の検証を進め、Microsoft 製品との親和性を高く評価したうえで、2025 年 6 月にはキリンホールディングスへの全社導入を決めました。業界トップ企業として早期に全社展開した狙いは、AI 活用を一部の先進部署に留めず、全社員の共通基盤として定着させることにありました。その後は主に国内のグループ会社や AI 活用に意欲のある従業員へのライセンス付与を進め、Copilotを起点とした AI エージェントの活用、さらには Agentic AI(自律型エージェント)への本格稼働に期待が集まっています。

永沢 拓也 氏, デジタル ICT戦略部 主査, キリンホールディングス株式会社

“任せられる仕事を AI に任せることで、従業員がお客さまや社会と共有できる価値の創造にチャレンジできる環境の実現を目指します。そのうえで、日々進化する AI のテクノロジーを商品開発や創薬といった領域に展開し、さらに AI を用いてお客さまのニーズの変化を的確に捉えることで、常によりよい商品やサービスを提供し続けられるサイクルを構築していきたいと考えています。”

永沢 拓也 氏, デジタル ICT戦略部 主査, キリンホールディングス株式会社

ボトムアップ施策を通して、自主的に AI 活用に取り組む機運を醸成

キリングループでは、キリンホールディングスと各グループ企業が一体となり、共通した指標のもとで戦略の達成に向けた議論とアクションを継続的に行える体制を構築しています。

「まず、各グループ企業が自律的かつスピード感を持って DX を推進できるように、各社に CIO や CDO、それに準ずるデジタル人財を配置しています。さらに、各社・各部門に AI 推進担当者を配置して、現場主導での AI 活用や業務プロセスの見直しを推進しやすい枠組みを整備しています」(永沢氏)

そして、グループ各社の CIO や CDO といった DX を担うトップレベルの人財が直接参画する AI 推進委員会を設置。ここでグループ全体の年度計画や事業戦略を策定し、その目標達成に向けた議論や施策立案を行っています。「国内従業員だけでも 15,000 名を超える当グループにおいて、各グループ企業が同じ指標を持って足並みを揃えるために AI 推進委員会は有効な仕組み」と永沢氏は語ります。

Copilot の普及・活用推進施策は、「生産性向上プロジェクト」の一環として、キリンホールディングスとキリンビジネスシステムが中心となって実行されています。

そのプロジェクトにおいて永沢氏が「一番重要なポイント」と強調するのが、従業員一人ひとりの意識を高めるためのボトムアップ施策です。人財育成を担当するキリンホールディングス株式会社 デジタル ICT戦略部の辻󠄀 志保美 氏はボトムアップ施策の方針についてこう説明します。

「私たちが大切にしているのは“やってみよう”という機運の醸成です。AI ツールの使い方やスキルの紹介よりも、まずは AI への興味を喚起し、自主的に取り組む意識を高めるための施策に重点的に取り組んでいます」(辻󠄀氏)

たとえば、オンラインセミナーには参加者に制限を設けず、あえて「簡単すぎるかもしれない」と感じるレベルの内容からスタートしました。Copilot のチャットに質問を打ち込むところから学べる初心者向けのものや、1 つの機能にフォーカスした 30 分単位の短いプログラムを多数用意。興味を持った従業員が気軽に参加でき、自分のペースでスキルアップできるよう工夫していったそうです。

また、プロジェクトチームには、営業やマーケティングといったデジタルをバックグラウンドとしないメンバーも所属。彼らのユーザー目線に近い意見を反映させることで、AI に馴染みのない従業員の興味を惹きやすい施策を実現できていると辻󠄀氏は語ります。さらに、若手の能力も効果的に取り入れているといいます。

「先日は、AI 初心者向けのセミナー運営を新入社員のメンバーに任せてみました。彼らは AI への抵抗感がありませんし、配信を通したコミュニケーションに長けている世代なので、参加者からのコメントへの返答も的確で、上手に場を盛り上げてくれました」(辻󠄀氏)

辻󠄀 志保美 氏, デジタル ICT戦略部, キリンホールディングス株式会社

“私たちが大切にしているのは“やってみよう”という機運の醸成です。AI ツールの使い方やスキルの紹介よりも、まずは AI への興味を喚起し、自主的に取り組む意識を高めるための施策に重点的に取り組んでいます。”

辻󠄀 志保美 氏, デジタル ICT戦略部, キリンホールディングス株式会社

エバンジェリストの協力を得ながら、試行錯誤を繰り返すことで施策をブラッシュアップ

同グループの自主的な AI 活用を促進する施策のなかでも象徴的なのが、「Budicle/ バディクル」と呼ばれるエバンジェリストの存在です。Budicle では、部門や職種を問わず Copilot ユーザーから有志を募り、現在はグループ全体で約 500 名ものメンバーが自発的に活動しています。彼らが中心となり、部門単位でのミニ研修の実施や活用事例を紹介する取組などが広がっています。

「Budicle の皆さんには、あえてこちらから活動内容を指定せず、自由に活動してもらっています。Budicle が自主的に AI 活用推進に取り組む姿を見て、周りの従業員が AI の必要性を自分ごととして捉えられるようになれば、より AI 活用の機運が高まるのではないかと考えました」(辻󠄀氏)

実は、導入開始直後は AI に関心を持つ従業員も少なく、社内の公共スペースで開催した相談会への参加者がゼロだったこともあったと辻󠄀氏。そこから、うまくいかなかった原因を分析して新たな施策に生かす試行錯誤を繰り返すことで、有効な施策を探っていったと振り返ります。

「相談会については、リアルな場で質問するというハードルが高かったのではないかと考えて、それ以降は Teams で質問を受け付けるようにしました。今は 30 分程度で構成しているオンラインセミナーも、もともとは 2 〜 3 時間と長かったのですが、受講者の要望を受けて、より短時間にコンテンツを絞った講座をやろうということで始まりました。短い時間にすることで気軽に参加してくれる人が増えて、昨年 12 月に開催されたセミナーでは 4,000 名ものユーザーが参加してくれました」(辻󠄀氏)
任意参加の社内セミナーにこれだけの人数が集まったことは、AI 活用が“一部の取り組み”を超え、浸透しつつあることを示しています。

グループ内の情報システム会社と日本マイクロソフトとの連携により、さらに意欲を向上

こうした取り組みをノウハウや技術面で支えるのが、これまでも Microsoft 365 ツールの導入・運営やキリングループ向けのカスタマイズなどを担当してきたキリンビジネスシステムです。

キリンビジネスシステムは日本マイクロソフトとも長年協働しており、その関係性を生かして、キリングループと日本マイクロソフトとの連携のハブとしても機能しています。

Copilot の利用率が高いユーザーを対象とした日本マイクロソフト本社での研修も、同社の提案によって実現しました。キリンビジネスシステム株式会社 EA・AI推進統轄部AI推進グループの辻󠄀 佐知 氏はその研修の成果をこう語ります。

「Copilot をさらに高度に使いこなしたいユーザーにとっては、日本マイクロソフト本社でプロフェッショナルからの研修を受けられる体験はとてもいい刺激になったようです。アンケートの反応もよく、さらに意欲を高めてもらうきっかけになったと思います」(KBS 辻󠄀氏)

これらの施策を通して、導入開始から約半年で同グループの Copilot ユーザーは 6,000 名を超え、利用率は 8 割以上を維持。ユースケースも着実に増えており、画像生成やスライド作成、メールの下書きやコーチングなど、Copilot を活用した身の回りの業務効率化が活発に行われています。また最近は、AI エージェントによる業務プロセス改善に取り組む従業員や部門も増えてきているそうです。

辻󠄀 佐知 氏, EA・AI推進統轄部AI推進グループ, キリンビジネスシステム株式会社

“Copilot をさらに高度に使いこなしたいユーザーにとっては、日本マイクロソフト本社でプロフェッショナルからの研修を受けられる体験はとてもいい刺激になったようです。アンケートの反応もよく、さらに意欲を高めてもらうきっかけになったと思います。”

辻󠄀 佐知 氏, EA・AI推進統轄部AI推進グループ, キリンビジネスシステム株式会社

日常的な AI エージェント活用が進み、業務プロセスのエージェント化も視野に

同グループでは 2025 年を「AI エージェント元年」と位置づけ、AI エージェントの活用を促しています。動画などの学習コンテンツでも AI エージェントを扱うことが増えており、それに伴って問い合わせやユースケースも増えていると辻󠄀氏。

「Microsoft Teams のファシリテート機能などは日常的に使われています。ほかにもノートブック機能を使って意見の壁打ちをしたり、決済申告書作成エージェントを自作して共有したりと、多くのユーザーが AI エージェントを活用し始めています」(辻󠄀氏)

「AI エージェントは RAG (Retrieval-Augmented Generation/ 検索拡張生成)の生成も比較的簡単に行えるので、問い合わせ対応をエージェントに任せる部門も出てきています。わからないことを人に聞く前にエージェントに聞く習慣が広まれば、さらにデータもノウハウも溜まるので、問い合わせ業務にかかる工数はもっと減らせると考えています」(永沢氏)

同グループでは、個人の反復作業を代替する活用にとどまらず、個人や部門単位で AI エージェントの活用を起点とし取り組んでいます。将来的には AI エージェントを業務システムやデータと連携させ、業務プロセスそのものに AI を組み込むことを目指しています。さらに組織横断で連携するプロセスにまで拡張し、AI 同士が情報連携して自律的に作業を遂行できる状態、すなわち Agentic AI へと発展させていく構想を持っています。永沢氏は、「Agentic AI を実現するためには、さらにグループ全体で AI に対する意識をさらに高める必要がある」と表情を引き締めます。

「業務プロセスのエージェント化には、業務プロセスそのものの変革が伴います。そのため、グループ各社やその情報部門が、AI でどのような新しい業務プロセスを実現するべきなのか、そこからどのような価値をお客さまに提供できるのか、といったビジョンを持つ必要があるのです。私たちも長期的なビジョンを持ちながら AI 推進会議の連携をさらに強化して、グループ全体の目線を合わせられる体制を築いていきたいと思います」(永沢氏)

挑戦できる環境を生かして、新しい事例をともに築きたい

今後の人材育成方針として辻󠄀氏は、理解度や職責ごとに必要とされる支援の提供を掲げます。
「まずは、AI に関するリテラシー向上が必要な層への支援。次に一歩進んで、AI エージェントを活用し始めている人たちへの支援。そしてさらに、高い視点から業務プロセス変革を推進する立場の人たちに向けた支援を強化していく予定です。Copilot の活用に関しては『すべての従業員が自分の作りたいものを作れる状態』を目標として、引き続き人材育成を進めていきたいと考えています」(辻󠄀氏)

キリンビジネスシステムにおいても、キリンホールディングスと足並みをそろえて施策展開に携わっていきたい、とKBS 辻󠄀氏。今後は、AI エージェントのさらなる普及を視野に入れて Copilot Studio 導入も進めていく予定です。

「Copilot Studio 導入のための情報のキャッチアップやガバナンスを含めた環境整備をしっかり進めていくことと、従前から進めてきた Power Platform による市民開発の普及と組み合わせることで、さらにレベルの高い生産性向上施策を展開していければと思っています」(KBS 辻󠄀氏)

「Agent Builder であれば習熟はそこまで難しくありませんが、Copilot Studio に関するトレーニングは私たちだけでは不安があります。日本マイクロソフトの皆さんには、ぜひ技術面のサポートと最新情報の提供をお願いしたいと思います」と辻󠄀氏。日本マイクロソフトへの期待を語ります。

そして最後に永沢氏は、「AI エージェント元年と位置づけられた本年。今後は、“ひとり 1 エージェント”を合言葉として、内勤者には簡易的な AI エージェントの構築スキル習得を必須にする検討を進めています。さらに研究開発やマーケティングではより高度なAI エージェント活用を進めており、やがては全従業員が AI を活用できる状態を一緒に創出できれば」という今後に向けた展望と、日本マイクロソフトとの共創に寄せる期待を語ってくれました。

「私たちは、Copilot の導入・普及施策を通じて、新しいことにトライしながらプロジェクトを進めるスタイルを確立してきました。日本マイクロソフトにはこの環境を実証の場と捉えていただき、一緒に新しい事例を作っていければと考えています」(永沢氏)

AI 推進委員会を通してグループ全体の足並みを揃えながら、ボトムアップ施策をブラッシュアップし続けることで AI 活用の裾野を広げ、Copilot の本格導入後約半年を経て、AI を組み込んだ業務全体の変革へと段階を移しつつあるキリングループ。私たち日本マイクロソフトも、その進化のスピードに遅れることなく伴走し、引き続き的確な支援を心がけてまいります。

永沢 拓也 氏, デジタル ICT戦略部 主査, キリンホールディングス株式会社

“業務プロセスのエージェント化には、業務プロセスそのものの変革が伴います。そのため、グループ各社やその情報部門が、AI でどのような新しい業務プロセスを実現するべきなのか、そこからどのような価値をお客さまに提供できるのか、といったビジョンを持つ必要があるのです。私たちも長期的なビジョンを持ちながら AI 推進会議の連携をさらに強化して、グループ全体の目線を合わせられる体制を築いていきたいと思います。”

永沢 拓也 氏, デジタル ICT戦略部 主査, キリンホールディングス株式会社

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